長い間動物たちを撮影してはいるが、僕は個体の特徴などを質問されると戸惑ってしまう。
ある時、猫好きの連中が集まって猫談義が盛り上がり猫の耳の話になった。そして、同じネコ科であるトラの耳の裏側は、一体どんな模様になっているのかという話まで発展した。当然質問のお鉢が僕に回って来たが明解な答えが出来なかった。この時自分は、いつもトラをほとんど前方からしか撮っていないことに気がついた。これはいけないと改めて後ろ姿をじっくりと観察してみると、耳の毛は黒くて中心に丸い白の点が一つ目玉のように付いていた。聞くところによるとこれは後方から来る敵に対して、威嚇する意味があるのだそうである。
 ジャイアントパンダが黒と白の毛並であることは誰でも知っているが、手足と目の周り、耳が黒いことを正しく覚えている人は案外少ない。
相変わらず僕も記憶には自信のあるほうでは無いのだが、トラの一件以来動物たちの表情や仕草だけでなく、形や紋様にも大いに興味が湧き意識して沢山撮影するようになったのである。
普段何気なく見ているシマウマやキリンの縞模様が、ファインダーの中で右左に動くと個体どうしの縞と縞が交差して、まるで万華鏡を覗いているようだ。レンズの倍率を上げて彼らの身体の部分に接近して見てみると、それはいつもの動物たちではなくて造形美の別世界なのである。
動物の紋様はトラの耳のように、外見だけではなく生きていくために必要で、それぞれにきっと意味があるのだと思うが、どうしてこんな形や紋様ができるのだろうか本当に不思議である。
恐らく誰もその訳は知らないだろう。だから僕はいつも彼らの紋様のことを
「神様のディザイン」と云っている。