今年の4月、横浜に新しい動物園が誕生した。正式な名称は「よこはま動物園」だが、広大なイメージから、ユーラシアと動物園のズーを合成して愛称ズーラシアと命名された。まだ全体の半分弱の公開 だが、完成するとその名のごとく世界最大の動物園になるそうである。僕はズーラシアのオープンを心待ちにしていた。それは建設が着工された頃、この動物園にやって来る動物たちの中に、これまで日本では見ることが出来なかった珍獣オカピが加えられたことを聞いたからである。僕がオカピの名前を初めて知ったのは写真の仕事を始めたころ、アメリカのニーナ・リーンという女性の動物写真家がサンディエゴの動物園で撮ったオカピ親子の写真を見たときである。僕が動物園にこだわり取材している理由はいろいろあるが、この写真に出逢ったこともその一つで
ある。それは、生まれて間もないころの不安げに立つオカピの子どもに、母親が頬ずりしている光景をとらえたものだった。一見何げない作品だが、じっと見ているとそこには写真の緻密な計算が成されていて構図や光線の採り方、色彩の繊細な配慮は勿論のことオカピ母子の絆、そして動物に対する作者の愛情までが感じられて、見るほどに引き込まれるような作品であった。
僕もいつの日かこんな写真が撮れるようになりたいと思った。
恐らく自分の一生で、何枚も見ることが出来ない胸に迫る一枚であろう。
 ズーラシアがオープンする一年ほど前だったか、たまたま特別なチャンスに恵まれオカピに会えることになった。僕は前夜から興奮状態だった。まだやってきて間もないので、さすがに放飼場には出してもらえなかったが、寝舎の中から牡牝2頭のオカピがその優しい眼差しで僕のほうを見ていた。
そのとき僕は若き日に感動した写真の記憶が蘇るのをおぼえた。
不思議なことに、もちろん偶然なのだが彼らはあのサンディエゴの動物園からやって来たのである。