「ほら見てごらんよ、あのオランウータンの顔、隣のおじさんに似ているよなあ。」ひとりのお父さんが僕の顔をちらちら見ながら、子供に大声で話しかけたのでびっくり。しかし、どうやら僕ではなく、家のお隣に住んでいるおじさんのことのようだ。
動物たちの姿や一瞬のしぐさが、どことなく人間と似通っているので思わず笑ったり拍手をしたりするのも動物園の楽しみのひとつである。動物たちの見事なエンターティナーぶりをのんびりと眺めていると、その場を離れ難くなるのが普通だと思うのだが、何故か動物の前に立ち止まらずにさっさと通り過ぎて行く人が意外に多いのに驚く。ある動物園で来園者の滞在時間を調査したら、平均二時間位だったそうだ。動物にひとこと声をかけるだけでも動物園は何か楽しい事件?が起るところなのにと僕は残念に思うのだ。 
急ぐ理由はともかくとして、ここまで気持ちに余裕のない生活に僕たち人間は慣らされてしまったのかと何だか悲しくなる。
 動物ウォッチングをしていると思わぬ発見が沢山ある。彼らの世界には今の人間が忘れ掛けている社会の仕組みやルールなどが実に正しく存在していて、
例えば、かつて僕たちの周りにごく普通に見ることが出来た、頑固で強いお父さんや悪いことは悪いとはっきり言えるお母さん、そして顔は怖いが他人の子供でも叱る心優しい近所のおじさんやおばさんがちゃんと居たりするのだ。家族や親子、夫婦の在り方、仲間を大切にする心、思いやりとは何かなど、動物たちはそれぞれの行動で示してくれる。はたして自分チンパンジーは普段から彼らのような社会生活や行動をしているだろうか。僕は自己反省をしながら、本当に笑われているのは人間のほうではないのだろうかと、いつも真面目に思っている。